理想を追ったら全員退職。組織崩壊からのカルチャーデザイン
株式会社ミライフ、代表のスケさん(佐藤ユウスケ)です。
今回はミライフのカルチャー連載第二弾です。前回、ミライフビジョンアートのご紹介をさせて頂きました。ああやって、書くと「それはミライフだから出来るんでしょ」とか、「最初からいい組織だったんでしょ」とか思うかもしれませんが、実は結構苦労してます(涙)
今回もちょっと長くなりそうな予感はするのですが、ミライフのカルチャーがどうやって出来てきたのか、そのストーリーをご紹介します。
創業(2016)
ミライフは2016年3月10日(サトウの日)に設立しました。当時、大きな野望は全くなくて、「理想のエージェントをやりたい」「家族と夜ご飯一緒に食べたい」という二つが目標でした。なので、当然、人を採用するなんて1ミリも思ってなくて、1人で自由にやっていこうと思ってました。「家族と夜ご飯一緒に食べたい」は独立して、即達成したので、「理想のエージェント」を追うことにチャレンジしていくことになります。
ただ、その当時は「理想のエージェントとは何か?」がまだ明確に見えてなかったので、独立初年度はそれを探求するために、「1年間エージェントはやらない」「リクルートからお仕事もらわない」という自分にとって2つの武器を両方封印することにしました。(当たり前のように、初年度は赤字)
大学院でも学び、論文を通じて人材業界を研究しまくって、行きついたのが、ミライフで取り組んでいる「理想のエージェント」です。その上で、自分がリクルートで感じていた人材業界に対する課題感や組織課題を、どう美しく解決していくかにチャレンジしたいと強く思いました。
僕が考える理想のエージェントとは、100%個人起点に立って、転職ありきではなく、大事にしている価値観や、未来志向で「将来どうなりたいか、なりたくないか」という理想未来を引き出しながら、非連続のチャレンジを支援するというスタイル。また、企業にとってはフィットする方をピンポイントで紹介してくれる頼れるパートナー。
そして、なにより自分、自分たちにとってこの仕事そのものがやりがい溢れるものにしたい。なので、エージェントをやる上で、この仕事が嫌いになることを片っ端から排除することにしました。ミライフは設立からずっと、個人業績目標やKPIはなく、シンプルに「目の前の人を少しでも幸せにする」ことを意識しています。
業績絶好調なのに組織崩壊(2019上期)
最初に取り組んだのが「性格のいい会社のセレクトショップをつくる」こと。自分たちが自信を持ってご紹介できる会社をひたすら新規開拓しました。昔の付き合いや、採用ニーズがたくさんあるからお取り引きをするのではなく、カスタマーにとって、HAPPYになる転職先を集めることにこだわってきました。
エージェントスタートして1年で、目標にしていた100社の性格のいい会社ラインナップが揃ったところで、「クライアントの期待に全然応えられていない」ことを痛感します。ミライフに期待してくれて、お取り引きを始めて頂くのに、僕一人では100社の期待に全然応えられない。。。
そこから、仲間を採用することになり、1名、2名と仲間が増えてきて、2019年の1月には6名の体制になり、業績としても、かなり順調になってきたところでした。しかし、1月に入社した2人が、共に4月に辞めたのをきっかけに、そこから退職ラッシュとなり、気付いたら在宅勤務のアルバイトメンバー以外、社員は全員退職。
1月にワクワクしていたのが、ずっと昔のよう。そこからたった半年でひとりぼっちになりました。希望と絶望。まさにジェットコースターのような半年でした。
ユースケさんは嘘つきだ
僕は、リクルート時代、ざっくり200人くらいのメンバーのマネジメントをさせてもらってきました。実はリーマンショックの早期退職以外で、僕のマネジメントしていたメンバーで辞めた人は一人もいないんです。あのリクルートで。。。
さらに人事系の本を書いたりもしてる。働き方改革やダイバーシティの講演もしてる。なので、マネジメントにはちょっとした自信もありました。それなのに、自分の会社は「社員の離職率100%」のある意味、奇跡の会社になってしまった。しくじり先生にもほどがありますよね。。。
その一連のやり取りで「ユースケさんは嘘つきだ」とも言われました。もちろん嘘をついているつもりはないのですが、嘘のように聞こえる。僕は我ながらロマンの人だと思います。性善説で、自律自走、それでいて提供価値の高いサプライズが出せる会社を作りたかった。ちなみに、これは今でもそう思っています。
ビジョンを打ち出すのは好きだし、得意なんだと思いますが、一方で、ベンチャーで直面するのは、ビジョンだけでは日常やっていけない。売上をあげなければ、みんなのお給料払えないし、会社も存続できません。理想とは程遠い、現実には地味な仕事が目の前にあったりします。自由な働き方は権利になり、業績目標のない仕事は理想を追うのではなく、個々人が好き勝手やるバラバラな組織になってしまった。もちろん、そうさせたのは僕自身なのですが。。。
ちなみにメンバーの退職理由は大きく2つで、①やることが難しすぎて、ついていけない。②理想と現実のGAP。言ってることとやってることが合っていない。
今思うと、頭で考え過ぎていたんだと思います。「模倣困難性の高いビジネスモデルにする!」みたいなこと言ってたけど、みんなに自由に、理想を追ってほしいと思うあまり、具体的なやり方を提示しなかったことで、社員のみんなが模倣できなかった。。。
まさに、実録ダメティール組織。ビジョンが美しければ美しいほど、現状とのGAPにゲンナリする。こうして、僕は嘘つきとなりました。
捨てる神あれば拾う神あり(2019下期)
みんな辞めてしまったので、僕はひとりぼっちになったけど、淡々と仕事をこなしていました。その一つが出版。元々は早稲田ビジネススクール(大学院)に通ってた際に書いた論文がベースになり、リクルート時代の大先輩の黒田さんに助けてもらい、最終的には共著という形で、世に発表することが出来ました。
何度も出版社に企画を断られながらも、黒田さんが諦めずに話を持ってきてくれました。それだけではなく「これは本にして世に出すべき。俺も一緒に書くから、がんばろう」って言ってくれました。この本は本当に黒田さんがいなかったら本になることはなかったと思います。捨てる神あれば、拾う神あり。黒田さんに拾ってもらいました。
本の出版が決まってからも、なかなか筆が進まず、何度も座礁しかけたけど、最後までやり切ってホント良かった。本書くのって、苦労100、利益無しって感じで、コスパ最悪なのですが、それでもこの内容は人材業界で働くみなさんに届けたかった。
さらにもう1人、拾う神が現れました。それがまっさん(松尾)です。自分で独立できる人だと思うけど、ミライフの考え方、理想に共感してくれて、最後は「ひとりでやるの寂しいじゃん」って言ってやってきてくれました。ここからミライフが劇的に変化していきます。「やっぱり理想を追いたい」と改めて思ったし、「まっさんとなら理想を追える」とも思いました。
そして、このおっさんベンチャーがめちゃめちゃ面白かった。よくよく考えたら、僕はリクルートで28歳でマネージャーにしてもらってから、ずっとマネジメントの道を走ってきました。自分も大したことないのに、若いメンバーを育成とかしてきました。でも、この時はマネジメントしてるのではなく、ジャズのセッションしてる感じ。みんなが好きな楽器持ち寄って、それぞれに反応しながら即興で音楽やってる。最高の感覚でした。
ミライフキャリアクリニックスタート(2020)
改めて理想を追うと思った時に、どうしてもやりたいことがありました。それがミライフキャリアクリニック(MCC/現ミライフキャリアデザイン)です。ずっとエージェントをやってきたけど、エージェントのゴールは「転職」というのに、違和感がありました。
転職するかどうかは決めてないけど、「自分、このままでいいのかな?」という人が、ちゃんとキャリアの方向性を決めることがなにより大事なのに、この課題に対する信頼できるサービスが無い。であれば、自分でやる!と思ったのがこのサービスで、「モヤモヤ以上転職未満」の人たちに、自分の価値観に気づいたり、ありたい姿を探求していくプログラムを作りました。
MCCのサービス自体についてはここでは触れませんが、MCC1期生をやり切った時、僕の中で「これは本当に価値のあるサービス」だと確信しました。なので、たとえビジネスとしてあまり利益が出なかったとしても、コツコツ続けていきたい。続けていくことできっと社会に影響を与えていくことができると思いました。人生が変わるきっかけを作り、背中を押し、人がチャレンジ、変化していくのを一番近くで見れるなんて、最高に楽しい。このMCCが生まれたことは、この後、ミライフが大きく変化していくきっかけにもなりました。
カルチャーを再構築する(2021~22)
自分たちがご機嫌に稼ぐだけなら無理して採用しなくてもいいのだけど、コツコツやってきた甲斐があり、徐々にお客さん(企業/カスタマー)からの信頼残高が溜まって、期待して頂けることが増えてきたので、それにもっと応えたいという気持ちが強くなってきました。加えて、MCCを続けていくとなると、いよいよちゃんと体制を作らないといけないと感じるようになり、ミライフ初の採用活動を行いました。wantedlyに掲載したら50人以上応募があり、びっくりした記憶があります。
元々2人採用予定だったのだけど、MCCの卒業生やリファーラルで、とても素敵な人たちが集まってくれたので、結果として4名採用。そして、その後、さらにMCC卒業生がもう1名加わってくれて、5人採用することができました。(しかも全員女性)
2人のおっさんベンチャーから、いきなり女子高になって、組織が大きく変化したタイミングで、最初にこだわったのが、カルチャーデザイン。一度、組織崩壊を経験しているからこそ、みんなでちゃんとミライフのビジョン、ミッション、バリューの意味共有をしたり、「ミライフは誰のために、何をする会社なのか」をフレームに、クライアント(企業)にとって、カスタマー(個人)にとって、そして自分たち(社員)にとって、どうありたいか、そのためにどうしていくかを語り合いました。
ミライフカルチャーブック
ミライフが大事にしたいこと、即ち、顧客起点で提供価値を出していくことは全く変わってないのですが、組織崩壊をしたときはこの議論や言語化されたルールがありませんでした。そして、自由という言葉が独り歩きし、組織がバラバラになってしまいました。
その経験が凝縮されたのが、この「ミライフカルチャーブック」です。こうありたいという理想を掲げたものというよりは、ミライフの考え方であり、「これはOK」「これはNG」というOBラインについて明記してあるものです。なので、これを理解したうえであれば、思いっきりやってOK!となります。
よくあるのが、自由にやっていいよと言いながらも、やったら怒られたとか、評価されなかったみたいな感じで、そうなると自律自走なんて生まれるわけがないんですよね。言ってることとやってることが実際は違うというのが、一番信頼を無くすので、ミライフでは言行一致であること、軸がブレないことにこだわっています。ちなみにこのミライフカルチャーブックをHPで公開したところ、1年で2万PV以上見てもらっていて、どんな記事よりもミライフのことを語ってくれているのかもしれません。
カルチャーブックを作ってみてホントによかったのは、当たり前のレベルが揃ったことで、これによって、みんなストレスなく、仕事が出来ていること。自由であり、ルールがないのがいいわけではなく、最低限のお約束があることで、みんなが心地よく、心理的安全性高く働ける。これが試行錯誤の結果、辿り着いたミライフカルチャーなのかなと思います。このような活動を評価頂き、心理的安全性AWARDも受賞することが出来ました。
改めてビジョンを追いたい(2022)
長くなってしまったストーリーもいよいよラストです。ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!あとちょっとお付き合いください。
2022年3~9月で、ミライフには10人の新メンバーが加わり、一気に組織が大きくなりました。新メンバーは入社前からカルチャーブックを熟読してくれてるメンバーも多く、カルチャーフィットしてる人が入ってくる(合わない人は来ない)ので、人数が増えつつも、いい組織コンディションを保つことが出来ていると思います。
だからこそ、改めて、心ひとつにビジョン、ミッションを追いたい。そう思って作ったのが、こちらのミライフビジョンアートです。説明は前回のこちらの記事を見て頂ければと思いますが、土台であるカルチャー作りにこだわってきたからこそ、いい組織ができ、いい事業が育ってきています。
ミライフは土台としてのカルチャー(性格のいい会社)があり、ミッションに沿って3つの事業が出来ていて、それをVALUEの力で推進していくことで、ビジョンに向かっていく。まさにこの一貫したストーリーを実現していきたいと思ってます。
そして、最後の絵に描いたように、ミライフだけが性格のいい会社になるのではなく、世の中に性格のいい会社(働きがい+多様な働き方)を増やしていきたいと本気で思っています。こんな風に、性格のいい会社を増やしていくことで、ワクワクする人生を送る人を増やしたいし、それを見て、子供たちが「社会に出て、働くのも悪くないな」って思ってもらえたら最高に嬉しいです!
いかがでしたでしょうか。冒頭に書かせて頂いた通り、組織崩壊も経験しましたし、いい時ばかりじゃなかったのが正直なところです。ただ、理想の旗は降ろさずに、みんなと議論しながらカルチャーを作ってこれたことで、今のミライフがあるのかなと思ってます。
ミライフではビジョン、ミッションに共感し、同じベクトルで仕事が出来る仲間を募集しています。
https://www.miraif.co.jp/recruit