このままでいいのか?と思ったときに考えたい自分軸キャリア
朝起きるのがつらい。会社に向かう足取りが重い。なぜこの仕事を続けているのか、うまく言葉にできない。そんな感覚を抱える方は、決して珍しくないように思います。
特に30代に差しかかる頃は、これまでの選択を振り返りながら、この先も同じ働き方でいいのだろうかと自問する瞬間が増えやすい時期かもしれません。
周囲から見ると安定しているように見えても、本人の中では納得しきれない感覚が残ることがあります。年収や肩書き、評価といった外から分かる要素が整っていても、自分の意思で働けている感じがしないと感じるケースもあるでしょう。
また、友人や同僚の転職や独立、新しい挑戦を目にすると、比較するつもりがなくても焦りが生まれることがあります。そのとき、心に浮かびやすいのが「自分、このままでいいのか?」という問いです。
この問いは、単なる気分の波というより、今の働き方や選び方を見直してみてもいいのでは、というサインとして捉えられることもあります。
この記事では、そんな不安や違和感を抱えたときにヒントになりうる「自分軸キャリア」という考え方を紹介します。憂鬱な気持ちの正体をひもときながら、より自分らしい働き方を描くためのヒントを一緒に探っていきましょう。
キャリア不安の正体はどこにあるのか
今の仕事をこの先も続けたいと思えないと感じる背景には、いくつか共通点が見られることがあります。もちろん人によって事情は違いますが、たとえば次のような要因が重なっている場合があります。
1. 他人軸で選んだ仕事・環境だった
就職や転職の場面では、安定していそう、親や周囲に勧められた、みんなが受けていたなど、外部要因を頼りに選ぶこともあります。そうした選択自体が悪いわけではない一方で、年数が経つほどに、これは本当に自分が望んだものだったのか、という違和感が育っていくことがあります。
2. 評価や成果の基準が、自分の価値観とズレている
組織によっては、売上や数値目標が優先される場面が多く、自分が大切にしたい価値観が置き去りになることがあります。
人との関わり、社会への貢献、専門性の追求、チームの安心感づくりなど、自分にとって意味がある軸が評価に結びつきにくい環境では、自分らしさを発揮しづらい感覚になってしまうこともありそうです。
3. 周囲の変化が気になり始める
30代になると、昇進・転職・独立など周囲の変化が目に入りやすくなり、自分は停滞しているのではと感じることがあります。
将来像が描けない状態では、気づかないうちに他人の物差しで自分を測りやすくなり、不安が膨らむこともあります。
こうした要因に共通しているのは、自分で選んでいる感覚が弱くなっているという点かもしれません。
「自分軸キャリア」という考え方
ここで紹介したいのが、「自分軸キャリア」という捉え方です。これは単に好きなことを仕事にするといった単純な話ではありません。
自分が大切にしたい価値観や、どんな状態で働いていたいか、どんな生き方を望むかを言語化し、それを意思決定の軸として持っておく、という考え方です。
キャリアに悩むとき、多くの人は次に何をするかを急いで考えがちです。ただ、その前に自分はどうありたいのかが曖昧なままだと、選んだ先でも同じ違和感が繰り返されることがあります。
だからこそ、最初の一歩として内側に目を向けることが役に立つ場合があります。
専門家の視点:Career Designer 半田のコメント

半田 夏妃
Career Designer
関西大学卒業後、アパレルセレクトショップ「FREAK'S STORE」を展開するデイトナ・インターナショナルに新卒で入社。店舗スタッフとしてキャリアをスタートさせ、新卒3年目で社内最速店長に昇格。
店長兼サブエリアマネージャーを経験したのち、人事総務部 人事企画へ異動しキャリアチェンジ。主に新卒の育成企画・運営に携わり、これまで体系化されていなかった新卒の3か年育成計画を整備。その後、店舗の中途採用担当として約2年間採用に従事し、2022年には産休・育休を経験。
産休復帰から1年が経過し、子育てとの両立も慣れてきたタイミングで「より自分らしく、ワークもライフも欲張りたい」と転職を決意。「働く、生きるを、HAPPYに」をミッションに掲げるミライフに共感し、ジョイン。
20代〜30代のビジネスパーソンを中心にキャリア相談に向き合ってきた、ミライフのキャリアデザイナー半田は、次のように話します。
「多くの方は市場価値やスキル・経験をベースにキャリアを考えます。もちろんそれも大事です。ただ、それだけだと途中で息切れしてしまうかも。もう一つの手がかりとして、自分がどうありたいかという生き方の軸を見ておくと、選択の納得感が変わってくることがあります」
例えば、人をサポートして喜ばれることにやりがいを感じる人が、売上重視の環境にいると疲れやすいことがあります。逆に、軸に合う役割や環境を選べると、長い目で見て成果も出やすくなる場合があります。
ここで大切なのは、つらい=努力不足、合わない=能力の問題、と短絡的に結論づけないことです。軸と環境の相性という観点で整理してみると、見え方が少し変わることがあります。
自分軸を見つけるための3ステップ
半田は、自分軸は頭で正解を探して見つけるというより、経験を振り返る中で輪郭が見えてくることが多いと言います。特別な自己分析ツールがなくても、次のような整理で十分進むことがあります。
1. 過去に「うれしかった瞬間」を思い出す
仕事の成果や評価に限らず、心が動いた出来事を思い出してみてください。誰かに感謝された、チームで達成した、裏方として支えたことがうまく回った。そうした場面でも構いません。
ポイントは、なぜうれしかったのかを一段掘り下げることです。達成感なのか、誰かの役に立てた実感なのか、強みを活かせた感覚なのか。感情の裏側に、価値観のヒントが残っていることがあります。
2. 次に、「憂鬱になった瞬間」を書き出す
違和感やしんどさを感じた場面も、できる範囲で言語化してみます。無理な要求、評価への納得感のなさ、意見が軽視された感覚など、心が重くなった瞬間には理由があることが多いです。
これはネガティブになるためではなく、自分にとって避けたい条件を把握するための作業です。合わない環境が分かると、次の選択が少し具体的になります。
3. 理想の一日を具体的に描く
もし今の延長線上で、制約が少ないとしたら、どんな一日を過ごしていたいでしょうか。朝の気分、関わる人、働く場所、仕事の進め方。仕事内容だけでなく、空気感や感情まで含めて描くのがコツです。
現実とのギャップが大きく感じられても、落ち込む必要はありません。むしろギャップは、何を変えると納得感が増えそうかのヒントになることがあります。
「この3つを通じて見えてくるのは、正解のキャリアというより、自分が納得しやすい軸です。自分軸は一度で完成するものではなく、経験とともに調整されていくもの、と捉えると扱いやすくなります」
よくある相談から考える自分軸
自分軸と聞くと、分かったようで分からないという声もよくあります。ここでは、よくある相談をもとに、考え方の一例を紹介します。
Q1. 自分軸が見えたら、すぐ転職したほうがいい?
営業として成果も出ているが、売上目標を追い続ける働き方に違和感がある。自己分析をしたら、相手の話を聞き、課題を整理することにやりがいがあると気づいた。なら転職すべき?
A. 転職は選択肢の一つ。必須とは限りません。
半田は、「今の環境で活かせる余地がないか」も検討材料になると話します。
「たとえば、顧客との長期的な関係構築、提案の質を上げる役割、後輩育成など、同じ職種でも軸に沿う比重を増やせる場合があります。転職はゴールではなく、あくまで手段の一つ。そう捉えると、選択肢が増えることがあります」
Q2. 自分の価値観が見えてきたのに、周囲と比べて焦る
スピードや肩書きより納得感を大切にしたい。でもSNSや社内の昇進情報を見ると焦る。自分は遅れているのでは?
A. 比較が起きたときは、過去の自分に基準を戻してみる方法があります。
一年前・三年前の自分と比べて、判断の質がどう変わったか、納得できた場面は増えたか、できるようになったことは何か。そうした棚卸しをすると、すでに自分なりの判断基準が育っていることに気づくことがあります。
「周囲と比べてしまうと、自分の軸はどうしても揺らぎやすくなります。しかし、キャリアは本来、他人のスピードや肩書きで測るものではありません。自分が何を大切にしてきたか、その選択にどれだけ納得できているかの積み重ねです」
答えを急がず、違和感を手がかりにする
仕事が憂鬱だと感じることは、必ずしも悪いことではありません。それは、自分のキャリアを自分の意思で見直したいという気持ちの表れとも言えます。
「自分軸キャリア」は、人生を一気に変えるためのスローガンというより、日々の選択を少し整理するための視点です。転職するかどうか、今の職場に残るかどうかをすぐ決めなくても、まずは自分は何に反応し、何に疲れやすいのかを丁寧に拾っていく。そういう進め方もあると思います。
もし、ひとりで考えるのが難しいと感じたら、信頼できる人やキャリアの専門家と一緒に言語化していくのも一案です。第三者が入ることで、思考が整理されやすくなることがあります。
今日からできる、3つのアクション
- ノートに、うれしかった瞬間/憂鬱だった瞬間をそれぞれ3つ書く
- 理想の一日を短い文章で描いてみる
- 必要に応じて、誰かに相談して言葉を整える
もし今、このままでいいのかという問いが頭から離れないなら、それは見直しのタイミングを知らせる合図なのかもしれません。私たちにも、頭の中を整理するためにお手伝いできることがあります。あなたが自分らしく納得して働ける未来を描くために、全力でサポートします。
