新卒で入社した大手総合商社。誰もが羨むキャリアのレールに乗っていたSさんですが、その心は「キャリア」と「日本とフランスの超遠距離恋愛」の狭間で大きく揺れ動いていました。「仕事を辞めてフランスへ行くか、このまま商社でキャリアを築くか」。MCDで彼が出した答えは、将来が約束された商社での仕事を捨てることでした。
商社での仕事は刺激的でした。入社3年目でイギリス駐在も経験し、帰国後は新規物流のプロジェクトを担当。でも、5年後、10年後の自分を想像した時、「面白くないな」と思ってしまったんです。 イギリスで出会った現地の人たちは、自分の人生を自分で決めて、家族やパートナーとの時間を何より大切にしていました。それに比べて、僕は会社から与えられた場所で、我慢しながら仕事をしてる。「この先30年、これを続けるのか?」。 当時、付き合っていたパートナーとは日本とフランスの超遠距離。結婚するなら、どちらかがキャリアを犠牲にしなければならない。「自分が稼ぐべき」という常識と、「彼女と暮らしたい」という本音の狭間で、答えを出せずにいました。
背中を押してくれたのは、ロールモデルインタビューで出会った先輩たちの言葉でした。海外に留学している人や、駐在経験のある人。彼らは口を揃えてこう言いました。「別に、その決断で死ぬことはないよ」「最悪、日本に帰ってくればなんとかなる」。勝手に「一度レールを外れたら終わりだ」と思い込んでいたのは自分だけでした。さらに、自分インタビューで周囲から「誠実」「嘘をつかない」というフィードバックをもらい、「どこの会社にいても、自分は自分としてやっていける」という自信が芽生えました。「会社人生」ではなく「自分の人生」を生きよう。そう腹を括った瞬間、視界が開けました。
僕が掲げた旗は、「大切なものを大切にする」。 シンプルですが、これ以上ないほど僕の本音でした。仕事の成果や世間体よりも、パートナーと生きることを最優先にする宣言です。 MCDの最終プレゼンで「会社を辞めます」と宣言し、本当に退職届を出しました。そして、パートナーのいるフランスへ渡りましたが、不思議と不安はありませんでした。「自分で決めた」という事実が、僕を支えてくれました。
フランスで1年過ごした後、プロポーズし、結婚。仕事面では電動モビリティのスタートアップにご縁があり、現地での事業開発を担当することになりました。その後、妻の転勤に合わせて香港へ移ることになりましたが、会社に相談したところ「じゃあ、人事をやってみない?」と打診され、フルリモートで人事・採用を担当することになりました。 公私ともに、MCD前では考えられないくらい大きな変化ですが、とても充実しています。 「大切なものを大切にする」。この旗さえ持っていれば、どこに住んでも、どんな仕事をしても、僕は僕でいられると思っています。